この可笑しくも葱くさい世界

丁度　６日前に、あの道を通った夜。

昨日のことのように、今　はっきりと思い出す。



変態に会いました。



先週の土曜の夜・・・そう、もう８時近い頃でした。
私は塾から帰宅する途中でした。
行きは車で送ってもらったため、帰りは徒歩だったのです。
もともと田舎道で電灯も数えるほどしか立っていない町ですから
暗闇はなかなかの濃さで行く手を覆っていました。
友人と二人　肩を並べて帰路を歩きながら
「稲沢ってホント危ないよねー暗いし、変な人よく出るし」
「でも犯罪までには及ばないんだよね、何か抜けてるというか」
と、のほほんとした会話をしていた訳です。
そうして気付けば、分かれ道に差し掛かっていました。
ここから先は、彼女とは別方向。私達は手を振り、別れました。

ただでさえ暗い上に人気も少ないので、私は何時も言われていたように
車通りの多い広めの車道横を歩いていました。
僅かながら明かりも灯り、道すがら何人かともすれ違いました。
因みにてくてく歩を進めつつ考えていた事と云えば

あー、こういう時って美少女エロゲーでは絶対何か起きるよなー
陵辱されちゃったりさー、へへへ
いちご１００％のつかさちゃんで　そういうエロ本あったなー
クオリティ高かったわーありゃ　
やっぱ無理矢理設定は従順すぎないコの方がエロイ。

脳内腐りきってますね。萎びてるよ。しかしこれが葱うじ。
華の乙女１７歳　女子高生。嘘じゃないです本当ですから。

とまあ、こんなＲ指定掛かりまくり妄想を垂れ流しつつ
家まであと数メートルという地点までたどり着きました。
あとはこの角を曲がり、ほんの僅かに進めば到着です。
自宅であるマンションが目前にそびえています。

ふーやれやれ、やっとだよーぃ

ピンク色のビジョンを振り払うこともせず、にやけつつ進む私。
小さな駐車場の前を横切ります。
するとそこへ

「ねえ・・・今　帰り？」

暗闇の奥、自動車の影と影の合間から声がしました。

しかし　まさか自分に話しかけている筈がない。
私は敢えなくスルー。すたすたと家を目指します。

「ね・・・ねえ・・・・ねええ・・・・」

ところが、尚も声はボソボソと、しかしハッキリと続いています。
駐車場の砂利を踏み締めて、ひとつの人影が現れました。
全身真っ黒のジャージ。頭には黒いひさし帽。
声から推測するに、私とさして歳は変わらない様です。

流石に自分を呼んでいると判り、目線を向けると


なんか　おかしい。


全身黒ずくめの格好なのに、下腹部辺りが妙に白い。
生々しく浮き上がって見える。


・・・・・・・・・・・・・あ、まさかさま。


「ねえ・・・・ちょっと触らない？コレ・・・ねえ・・・」



コイツ　局部　ダシトル　＾＾＾＾＾＾＾＾


乙女としては一発　叫んで駆け出したい場面です。
だけども私はそんなキャラではない。
それに間が悪いことに、丁度エロゲー妄想をしていたのです。
まるで自分の脳内が具現化したような現実に、葱さんはボンヤリしていました。
惜しむらくは何故か自分が主人公サイドに廻っていたこと。
ここは愛くるしい美少女でなければならないのに。つかさちゃんみたいな。

そこで私は云いました。


「いや・・・いいです」


この話を友達にすると、必ず「冷静すぎだろ！」と云われますが
その時は本当に自然と口をついて出たのです。
多分　次に会ってもこう言うだろう。乙女感情壊死＾＾＾

ところが相手も負けない。逃げない。ひるまない。
ニヤニヤしながら近付いて来ました。

「なんで？触ろうよ・・・ちょっとだけでもさあ・・・ねえ・・・」


どうしてそこで『なんで？』と思うんだよ＾＾＾

私のコマンドにあるのは『１．妄想　２．逃走　３．返答』だよ。

『触る！』、ないんだよ。

触る？触っちゃう？うっふふと聞かれれば

答えは,『NO』...だ。


「いや、ホント　いいんで」
答えつつ　とりあえず早歩きをしてみる私。けどブーツが重くてもたつく。
依然として　つかさちゃん陵辱妄想は進行中。
いい加減にして欲しいですね。

何だか近くで荒く息を吐く音が聞こえるなあと思って振り向くと

追いかけてきてた。


マジか＾＾＾＾＾＾

こりゃ流石にちょっとヤバイかねーと判断し、近年稀に見るスピードで
マッハゴーゴーゴォオオオオとばかりに掛けだした私。
５０メートル走の記録を８秒代に塗り替えそうな勢い。（弱い
けれど痴漢も早い！！早い！！！早い！！！！！

妄想と失踪と問答（「触ろうよ・・・」「いや、いいですホント」）を繰り返し
ようやっと明るみに足を踏み入れた　その瞬間！！！


ぶぅわっさー！！


スカート　め　　く　　ら　　れ　　た　　ー　！　！　


ケ　　ツ　さ　　わ　　ら　　れ　　た　　ー　！　！　



その時　脳裏を過ぎったのはワカメちゃんでした。


ここで可愛らしく「ひゃんっ！」とか言っておけばいいものを
またも葱うじ１７歳・属性：女子高生はデビルヴォイスで


「ちょっと、何するんですかー」

持ち前のゴリラオーラを従えながら振り向き言い放った時、
もう彼の姿はありませんでした。
忽然と。うおお。早業。最後のお触りも超手際良かったし。

しみじみと「本当にあるんだね、ああいうの」と思いつつ帰宅。
母はえらく心配してくれましたが、父には何故か「お前が悪い」と言われました＾＾＾
どうもあの駐車場は有名な出没スポットだったらしい。
けど　そこ通らないと帰れネェんだよ親父！！！！！


まあ、何というかタイムリーな事件で驚いた。
多分今頃　彼は、灯りの下で見てしまった私の顔にトラウマ被ってる。

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