この可笑しくも葱くさい世界

まず携帯電話の充電器（ACアダプタがぶっこわれ
携帯本体から抜けなくなってしもうた。

長いコードで繋がるコンセントと携帯電話…。
焦ったわたしは何を思ったかコードを引きちぎり
無理矢理　「携帯できる」仕様にモデルチェンジ。
しかしコネクタ自体は結合したままなので、金属部分丸出し。
指を二箇所ブパンスパンと切られました。痛みもなく血がぷしゃー。

しかたなく危険な部位にはティッシュを巻きつけ、学校へ。
友達もかつて同じ目に遭ったらしく、
「ショップですぐ直してくれたよ」とのありがたい情報をゲット。
授業後に最寄のauショップに出向き、事情を説明すると
「あー、これは無理なのでー、修理になっちゃいますね。
　２週間くらい見て頂かないと」

HA?

「ちなみに当店、いま代替機がないんですよ」

HE?

「なのでー、機種変更していただければ３０分くらいで
　新しい携帯電話にお取替えできますので」


ものすっごく誘導の匂いを感じました。

あれよあれよと言う間にスマホや新機種を薦められ、
キャンペーン中だからと別の商品をセットにした価格を見積もられ
・・・まさに怒涛の営業トーク。

身の危険を感じた私は方便を並べ立てなんとか退散。
「なんかあの店、目の色が違う。ノルマとかあるんだろなー」と思いつつ
すこし離れた場所にある、別の大きなauショップを訪ねました。
そこでも同じように、武器と化した携帯電話を見せて説明すると
「あ、お待ちください」
受付のダンディなおじさまが取り出したのは、
どこのご家庭にでもございます一本のボールペン。
くくくっと先を押し当てて、ものの数秒で救出してくださいました。


まじ　なんだったん。あの　みせ。


・・・恨み言いっても仕方ないよね。
向こうも向こうで商売だしね。うん。

なんやかんやでアパートへとたどり着き、
エレベーターを降りたわたしを待ち受けていたのは
あろうことか
わたしの部屋へと続く扉のまん前に陣取る


ヴォルデモート（けっこうでかい）の姿でした。


（ちなみにヴォルさんは蛇ではなくて夏場によく出るあの虫です）


ほぼ初めて一対一で対峙することとなり、わたしが顔面蒼白。
とりあえず二百歩くらい後ずさり友人らHELPにメール。
『エクスペリアームス！』『それは幻影だ』『写メくれ』などなど
みなさまあたたかいアドバイスをありがとうございました…。
ほんとうに、涙がでそうでした。ええ、ええ…。

３０分くらい睨みあっていたら同じ階にお住まいの男性が
可愛い彼女さんを連れて現れまして
般若の如き形相のわたしに対し、ふたりそろって柔らかな会釈を
プレゼントしてくださいました。
「すいません虫退治するアイテムを我に」などとは
とても言い出せない雰囲気でした。
だって明らかに『ハジメテの彼の部屋』ムードだったもん！

部屋へとしけこんだふたりを頼ることはもはやできない。
わたしは孤軍奮闘せねばならぬのです。
と、そのときヴォルが動いた。
まるでわたしを翻弄するかのように、
サイドステップ・前・うしろ、
そしてまたサイドへ…。
結局同じ位置に戻るというね。ちっくしょおおおおおお

そのまま約２０分経過。
応援を呼ぶための携帯電話ももは虫の息です。
そんなときチャンスは訪れました。
奴はおもむろにエレベーター乗り場のくぼみへ！
わずかながら移動したのです。

わたしは走りました。こころのなかで・・・・・
実際は壁にへばりつきながらドアの前へとにじり寄り、
むちゃくちゃ腕を伸ばしてカードキーを差し込んで
奴の呼吸を確かめながら

滑り込むようになかへ！！

成功です。
だいせいこうです。

こうしてわたしは、ようやく『帰宅』という
達成不可欠なミッションを終えたのです。


でもまた扉開けたらアノコが
「こんにちは」してる気がして・・・
ひっきー秒読み。

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